【アメリカ・和菓子店巡り#5】フレズノ・旧日本町にある手作り饅頭店「Kogetsu-do」

サンフランシスコとL.Aの中間、セントラルバレーを代表する街フレズノの日本町の名残りとしても貴重な和菓子店「湖月堂」。手作りの大きなお餅は、カリフォルニア州横断ロードトリップの途中にぜひ立ち寄りたいお店です。

湖月堂の歴史

フレズノ・ダウンタウンの片隅にひっそりと残る和菓子店「湖月堂」。現在の3代目オーナーである池田リンさんの祖父にあたる初代オーナー池田杉松さんは、1910年に渡米し、夫婦で1915年に湖月堂をオープンしました。この頃フレズノ郡では、谷の牧場でブドウ摘みの仕事を求める約3,000人の日本人出稼ぎ労働者の増加に対応するため、日系企業が急成長していた時期になります。

1920年、当時繁栄していた日本町地区のFストリート沿いにある現在の店舗に移転しましたが、戦争により、池田夫妻はフレズノ・アッセンブリー・センター、その後アーカンソー州ジェローム、アリゾナ州ギラ・リバーに収監されることになり、一家は中国人家族に店を預けざるを得なくなったという経歴があります。1944 年にフレズノに戻った一家は、息子のロイさんとマサオさんが経営を引き継ぎ、事業を再開。1990年代にリンさんの父が病に倒れた際に、リンさんが後を継ぎ、現在も彼女の娘エミさん以外は誰も知らないレシピで手作りで和菓子作りを行っています。

戦時中の強制収容による突然の長期中断という最大の障害にもかかわらず、あらゆる困難を乗り越えて現在まで営業を続ける数少ない日系の家族経営店舗となります。

湖月堂の場所とアクセス方法

湖月堂は1920年代に栄えていたフレズノの旧日本町のF通り沿いにあります。現在、当時の面影が残るのはF通り沿いにある「日本ビル」のみ。こちらの一階ではメキシコと中華レストランが営業を行っています。ここはフレズノダウンタウンの中心部のほぼ近い場所にありますが、あまり栄えた場所ではありません。特に散策するような場所もなく夜は人通りが途絶えます。公共交通機関もないため、車でアクセスしましょう。

昔の名残りか、このビルの一階には赤のペンキで「フレズノ・ジャパンタウン」と描かれた壁絵が残されています。唯一日本町らしいスポットといえば、こことカーン通りにある仏教寺となります。

店舗の外観

こちらがF通り沿いにある店舗の様子。通り沿いは全てガラス張りになっており、右上に「湖月堂・饅頭屋」の店名、右下には湖月堂の歴史が記されたプレートが置かれています。どことなくL.Aのリトル東京にある風月堂に似た風貌です。

店舗の内観

メインエントランスから入った店内の様子。両サイドに木製のショーケースが置かれ、おそらく長い間このままの状態であったような品物が雑然と置かれています。

一番奥の木製カウンターの奥にあるのがキッチン。右手に梱包の用品、左手に木製のショーケースが置かれています。

エントランス入ってすぐ左側にあるのが、かき氷ステーション。筆者が訪れた時は販売されていませんでしたが、餅アイスや手作りシロップを使ったかき氷を販売しています。

木製ショーケースの様子。支払いは現金のみで、餅はどれも一律1.5ドルです。サンノゼの集栄堂が2.25ドル、ハワイ島ヒロの苺大福が2.75ドルであるのを比べると、かなり良心的な値段設定です。

3世代にわたって受け継がれているレシピはもちろん、リンさんの祖父母が使っていた杵を使い、当時と同じ陳列ケースに包装された和菓子は、同じく107年以上使われている木箱に見栄えよく並べられています。筆者が訪れた時はすでに、ほぼどのお餅も売り切れており、その人気ぶりが伺えます。和菓子はどれも保存料が含まれていないため、短期保存には冷蔵保存、長期保存には冷凍保存が必要です。

店内右側の壁に飾られているのが、1920年に撮影された初代オーナー、リンさんの祖父母の写真です。こうやってみると店内の様子はあまり変化がなく、当時の面影を色濃く残しているのが分かります。

購入したお餅をご紹介

今回購入できたお餅をご紹介します。店内にメニューは貼られておらず、ショーケースの木箱に入ったものがその日買えるアイテムとなります。今回購入できたのが、お饅頭2種類、アーモンドトリュフ餅、大豆とリマ豆で作られたお餅2種類。それぞれのお餅は、サランラップでぴっちりと包装されています。

まずはスタンダートなこし餡のお餅。お餅自体の質感が非常に柔らかく、他の和菓子店を比べてもダントツの柔らかさです。サイズも大きめで、手作り感が満載。スタンダードな優しい味わいのお餅です。

続いては勉強堂でも販売していたリマビーンズのお餅。こちらは餡の質感が硬めでボソボソとして、甘さが控えめ。こし餡のお餅より、筆者的にはこちらの方が好みで、おすすめしたい一品です。

こちらがチョコレートアーモンドトリュフ餅。中にナッツが入っており、トリュフのバリバリした食感とチョコレートの味わいが魅力。モチモチとしたお餅と意外と相性がよく、チョコレートのフィリングが入ったお餅を食べている感覚。餡子が苦手な方にぴったりだと感じます。

こちらがお饅頭。蒸された外皮はむっちりとした質感で、こし餡と良く合う懐かしい味です。定番の和菓子という印象で、時々食べたくなるあの味わいです。

続いては翌日に特注でオーダーしたフルーツ餅。新鮮なフルーツを使ったお餅は、日替わりでフィリングが変化します。お店の方によると、朝に電話してオーダーをするのがおすすめなのだそう。今回用意していただいたのは、ブルーベリーとブラックベリーの2種類。それぞれのお餅はどっしりとしており、これが1.5ドルとは非常にコスパが良いと感じます。

サランラップを外した様子。どちらもお餅が柔らかく、食べ応えのある大きさです。

断面図はこのような感じ。新鮮なフルーツがみっちり入っており、爽やかな食べ応えです。フィリングの甘さはそこまでなく、非常にジューシーでフルーティー。今まで食べたフルーツ餅の中では、一番好みの味わい。遠方からお客が訪れ、人気ですぐに売り切れるのかが納得できるおいしさです。

近くにあるアンティークショップを覗いてみよう

湖月堂から歩いて僅か、1.5ブロックの場所に「ヨシ・ワールド」という日系店の名残りを感じるアンティーク店舗があったので、こちらを覗いてみました。

中は昔ながらの雑貨が混沌と陳列されていますが、その1箇所に和食器コーナーが設置されています。

まるでここに住んでおられた日系人家族の食器棚をそのまま運んできたような感じで、和食器がたくさん陳列されています。1900年初期に日本から移り住んでこられた、日系人の方が大切にしてきたであろう品物の数々から、当時のカリフォルニアでの生活の面影を感じることができます。

最後に

中央カリフォルニア、農作物の生産で知られるフレズノのダウンタウンにある日本の饅頭屋をご紹介しました。ここはリンさんが全て手作業で作られており、生産数に限りがあることと、非常に人気のお店なのですぐ売り切れてしまいます。開店と同時に訪れることをお勧めします。フレズノに訪れた際は、ぜひ立ち寄ってみてください。

店舗情報

関連記事

ブログランキング・にほんブログ村

You may also like