2023年4月11日、アマゾン傘下で高級グルメスーパー「ホールフーズマーケット」が、去年オープンしたばかりのミッドマーケット地区にあるフラッグシップ店を閉鎖しました。閉鎖された今日の店舗の様子をお伝えします。
2022年3月にオープンしたばかりの新店舗
以前の記事でもお伝えしたように、今回閉鎖となったのが2022年3月にオープンしたばかりのフラッグシップ店になります。オープンしたのは2022年3月10日、わずか1年間後に閉鎖となる運びとなりました。約6,000平方メートルの広さがあり、ほとんどが地元産となる3,700種類もの商品を扱っていたフラッグシップ店は、市内で1番の大きさを誇る店舗。オープンしたばかり、という印象が強かったのですが、まさか1年で閉鎖という運びとなりました。
閉鎖の原因は「安全性」の懸念
今回閉鎖の発表があったのが、4月10日の営業時間終了後で、まさに晴天の霹靂です。ホールフーズマーケットの広報担当者はこの閉鎖に関して、チームメンバーの安全を確保するためと述べています。この店舗で働いていた従業員は、全員他の店舗に移動になるとのこと。同店の再開の可能性については、時期は未定であると述べています。
ネックとなった立地条件
このフラッグシップ店は、シビックセンターのホームレス救済センターに程近い場所で、この場所を利用するドラッグ中毒やホームレスによる窃盗被害が問題となっていました。筆者自身もよく利用する店舗でしたが、まずエレベーター前に警備員が待機しており、そこでスクリーンされるシステムだったものの、実際に挙動不審の人を何度も目撃したり、箱入りの缶ジュースを勝手に開けて一本だけ取り出す人など通常のホールフーズマーケットに比べると、客層が荒れている印象は受けていました。
そのせいか、オープン当初は閉店時間が10時までだったのが、半年程度で7時に変更、何度が利用した店内の公共トイレも、いつの間にか警備員が常在しレシートがないと入れないことと、ドアのQRコードをスマホでスキャンしないとオープンしない仕様に変わっていました。常にこの店舗で働いている場合はおそらく、このように荒れた客層の対応が大変だったのでは、と感じます。
シビックセンターの治安悪化について
もともと、政府関連の建物が隣接するシビックセンターのプラザはホームレスが多かったのですが、それに拍車をかけたのが2022年1月にオープンした救済センター「テンダーロイン・リンケージ・センター」です。これはサンフランシスコのテンダーロイン緊急対策の一環として作られ、麻薬の依存症やその他の問題に悩む人々が、すぐに支援を受け、長期的なケアや住居に移行するためのスペースとしてオープンし、ドラッグの過剰摂取の防止として公共摂取所が設けられました。
その背景から、周辺にドラッグディーラーが増加してしまい、ホールフーズマーケット周辺の治安も悪化をたどりました。コンセプト自体は良かったものの、周辺住民に大きな不快感を与えているのが問題となり、仮設の救済センターは2022年12月に閉鎖となりましたが、相変わらず周辺は荒れた印象です。
閉鎖されたビルの様子
4月10日の夜に突然閉鎖が宣告されたホールフーズマーケット、4月11日の様子をお伝えします。いつもは通りに向かって開いていたドアは施錠されており、警備員が中から入れない旨をジェスチャーで知らせています。
昨日の今日で知らない人がほとんどで、多くの人が立ち寄って入れず困惑している様子です。
張り紙には、「4月11日よりこの店舗を閉鎖します。他の8店舗での利用をお待ちしています」と、急にとりあえず作成したような素っ気ない張り紙が貼られています。
当然のことながら、昨日までは普通に営業していたため、店内はいつもと変わらないように商品が陳列されているのが、エントランスのガラス窓越しに見て取れます。
最後に
サンフランシスコは現在、多くのハイテク企業が撤退する中、空洞化が問題視されていますが、このホールフーズマーケットの撤退によってダウンタウンがますます殺風景となってしまうとの懸念も出ています。以前は活気があったツイッター本社にあるフードコートも、ツイッターの大量解雇により数週間前に立ち寄った時点では利用客が減少し閑散としている雰囲気でした。今後、どのような対策が行われていくのか、ぜひ動向を見守りたいところです。